【麺 to the future|宗近製麺】

宗近製麺|『おいしい麺の専門店』オープン! 構想10年、挫折2回を経た、新店舗完成までの話。

2022/12/16

宗近製麺|『おいしい麺の専門店』オープン! 構想10年、挫折2回を経た、新店舗完成までの話。

2022年もあっという間に12月。年末の繁忙期を前に、ついに新店舗が完成しました。その名も『おいしい麺の専門店』! 構想10年を経て、今年12月3日(土)にオープンとなった背景には、本当にいろいろなことがあったようです。

そこで今回は、新店舗完成までのエピソードを、建築デザインを手掛けた建築家の伊藤瑞貴さんを交えてお話をお聞きしました。

※『おいしい麺の専門店』は、1階は物販エリア、2階は飲食エリア。


―店舗を建てようと決めた経緯を教えてください。

宗近さん(以下、宗近)私が家業を継ぐためにUターンした約10年前。当時、忙しいのに赤字経営でした。その状況を打破するために競合他社より安価にしたり、他社と似た商品を作ってみましたが、結局、売れなくて赤字という悪循環が続いていました。そこで、弊社の強みである、県内在住のお客様が多いことと厳選した原料、この2つに特化することを考えました。

ただ、原料を厳選すれば当然、価格は上がります。麺といえば比較的安価で、スーパーで購入するのが一般的ですから、スーパーでの取り扱いは厳しくなります。それと、以前から思っていたことですが、和菓子や洋菓子には専門店があるのに、なぜ麺には専門店が無いのかという疑問。そんなことを考えてたどり着いた結論が、「自社販売をすれば良い。そのための店舗を建てよう」だったんです。

かつて駐車場だった部分が新店舗となった。道路側には植栽を予定

結論から完成までに10年も要しました。その理由は? 

宗近:実は、2回の挫折がありました。 1回目はまさに10年前。建築の確認申請も終わり、年明けから工事という年末の繁忙期のことでした。なんと現場を指揮する社長(父親)が腰骨を骨折して現場を離脱。社長の代わりに急遽、私が現場に入って年末を乗り切りました。店舗建築については、社長不在では工事を進められないと、一旦、白紙になりました。

当時は本当に大変でした。でも、そのおかげで現場のことが良くわかるようになったので、良い経験であったと思っています。


この段階では、まだ伊藤さんと出会ってないのですね? 

宗近:まだです。伊藤さんとの出会いは2018年頃で、その後に2回目の挫折です。

藤さん(以下、伊藤):宗近さんのご自宅建築からのお付き合いで、2回目の挫折の話も少し聞いたような気がしますね。

宗近:1回目の挫折後、しばらくは具体的な進展はありませんでした。ようやく動き出したのは2019年で、県内の商業施設のテナントとしてのお誘いでした。良い話だと思って順調に進めていたのですが、数カ月後から始まったコロナ禍でとん挫。結局、断念しました。


自宅建築から店舗建築へ、どのようにつながっていくのですか?

宗近:2回目の挫折前、2018年頃。自宅建築を思案中で、いろいろな建築家さんに話を聞いたり、内覧会にも出かけていました。いくつも見聞きしましたが、何となくしっくりこなくて……。どこかで妥協してしまおうかなぁと思い始めていた時、出かけた内覧会がまさに伊藤さんが手掛けた住宅でした。


その住宅が、まさに“しっくりきた”と?

宗近そう! これまで一緒に思案してきた奥さんも唯一、「いいんじゃない!」と言ってくれました。それくらい、しっくりきました。建築に限らずモノ作りにおいて大切なことは、“何を”作るか以上に、“誰と”作るかということ。内覧会を見て、伊藤さんと一緒に家を作りたいなぁと感じました。

『宗近』ブランドの麺が並び、購入できる。麺以外にも、実は「きな粉」も製造販売している

宗近さんとの出会いは覚えていらっしゃいますか?

住宅建築の依頼後、「店舗も出来ますか?」と聞かれたことを覚えています。「コンセプトをしっかりとまとめていくことが大切ですよ」と答えたと思います。

宗近:伊藤さんが手掛けた「むらかみ食堂」(福井市)が良いなぁと思っていて。自宅は店舗の予行練習とも考えていたので、店舗もお願いするつもりでした。自宅の完成後、店舗に取り掛かったのですが、これまたアクシデントというか、いろいろありましたね。

:建築現場でのアクシデントやトラブルは付きもの、大変なことばかりです。それを大変なんて言っていたらキリがない(笑)。うまくいかないのであれば、うまくいく方法を探すことに専念するだけです。

「宗近さんからのご依頼を機に、視察を兼ねて県内あちこちのそば店に出かけるようになりました。内覧会の時、見学者の皆さんの購入量の多さに驚き、歴史の重みを感じました。もちろん、私もたくさん購入しました(笑)」(伊藤さん)

大変だった“いろいろ”を聞かせてください!

宗近:昨年の春までは、駐車場内に別棟(平屋)で建てるつもりでした。でも、会社のほうでいろいろとあって、本格的に始まったのは昨年の9月。別棟ではなく増築(工場隣接 2階建て)のほうが製麺工場とのつながりがあり良いのではと考え、伊藤さんに急遽プラン変更をお伝えしました。

:正直言うと、別棟で平屋の方が建てやすいし、コストも低く抑えられます。でも宗近さんのお話を聞いていて、『宗近』の魅力を伝えていくには工場との一体型、増築のほうが良いと思ったんです。店舗と工場の間には事務所や配送業務スペースがあって、複雑な工事になるのは分かっていましたが、それを承知で増築をご提案しました。

宗近:別棟(平屋)から増築への変更ですから、またゼロからのスタートです。急ピッチで進めていただいたのは言うまでもありません。

:階段位置も、最初はこの場所(入口すぐ)ではなかったですよね。

宗近:私としては、1階の物販(商品)エリアを見てから2階の飲食エリアに行って欲しいなぁと考えていたのですが……。

:物販エリアを通らないと2階に行けないのは、お客さん心理としてはちょっと辛いんのではないかなぁと。

来春オープン予定の2階。写真の奥のテラスからは広々とした田園風景と北陸新幹線が見える

何か買わなければ、2階に上がれないというプレッシャー?(笑)

:そんな感じ。だから、気兼ねなく2階に上がってもらうために、玄関入ってすぐの位置に階段を提案しました。

宗近:まずは2階に気兼ねなく上がっていただくことが大切だと。飲食後、ゆっくり商品を見ていただければ良いってことですよね。 それと、2階でも大きなコトが起こりました。これが一番大きなアクシデント!(笑)


2階で一体、何があったのでしょう? テラスもあって素敵な感じですが…。

宗近:そのテラスが問題で……。当初は2階全部が客席の予定でしたが、コストがかかり過ぎる、かなり高額になると言われました。予算を大幅にオーバーしたため、一時は2階を無くそうとも考えました。

:言い訳をさせてください! コロナ禍や海外での戦争で資材価格が高騰、入荷も大幅に遅れていました。価格高騰は想定を遥かに超えていて、現在も進行中。これは建築業界に限らず他業界でも同じで、本当に困っています。

宗近:そこで素人ながらに考えたのは、2階は残したいから客席の半分を削ろうと。そして削った半分はテラスにして、2階からの風景を見てもらってはどうかなぁと。

:図面を描き直し、改めて見積りをしてみたら、何とかいけそうだと。

宗近:大きな変更でしたが、先日の内覧会では「テラスが気持ち良い~」と大好評。まさに“禍転じて福と為す”です。


―改めて、新店舗のコンセプトや見どころ、ポイントを教えてください。

宗近:コンセプト=店名『おいしい麺の専門店』で、その上で大切にしたことは2つ。①近くにお住いの方が普段使いできること、②製麺から販売までの一貫生産を店舗内で表現できること。専門店として麺の価値を高めつつ、弊社のブランド価値も認識いただければと考えています。 それと、ストレート過ぎる店名にしたのは、誰にでも分かりやすくて、説明もしやすいから。決まったのは看板製作のタイミングで、今年の夏。夜な夜な考えながら、近年ブームの「高級食パン専門店○○○」からもヒントをもらいました。また、弊社はそばだけでなく中華麺もうどんもありますので、“おいしい麺”としました。

:私は宗近さんからのご要望をお聞きしながら、“この場所でしかできないこと”を考えました。周辺に広がるそば畑を見て、そばを収穫して、石臼で挽いて、麺を打って、2階でそばを味わう。この一連の流れはここでしか体感できないことですし、おいしさも格別。まさに、食のトレイサビリティが感じられる空間です。1階奥、ガラス張りの部分は製麺室ですし、2階はオープンキッチンで“しずる感”も意識しました。


麺の製造は、すべて機械ではない? 見せても良い場所なのですか?

宗近:製麺室は、ぜひ見ていただきたい場所の一つです。食のおいしさは、人の手が作り出すものだと思っていて、機械やロボットができる部分はそれに任せて、人の手でないとおいしさが生み出せない部分は人が行う、ハイブリッドという考え方です。大量生産とは真逆の方法かもしれませんが、おそらく世界初となる画期的な製麺システムを導入するので、楽しみにしていてください。(導入は来春以降)

:宗近さんのやりたいことにフォーカスしながら、どうすれば実現できるかを考えた実現した店舗です。だから、どんどんお客様に来て欲しいし、商品も売れて欲しい。ファンをさらに増やせる店舗であって欲しいですよね。その結果、5年後には大きな工場が出来ているかもしれませんね(笑)

宗近:伊藤さんは決して「できない」とはおっしゃらなかった。例えば、Aの要望に対して、「Aもできるけど、BもCもあるし、何ならSだってある」という具合に、いろいろな提案をしてくだいました。それが良かったし、嬉しかった。

:スタッフにも、「お客様の要望に“できない(No)”は言わない」を徹底し、いろんな可能性を模索して、もっと良い何かを提案するように伝えています。ちなみに私達のミッションは、“たのしいけんちくを、もっと。”。人や地域、自然、いろいろなつながりを大切にしながら、楽しい建築を続けていきたいと思っています(笑)


今後の予定を教えてください。

宗近1階の物販エリアは、12月3日(土)にオープンしました。ご自宅用からお土産、贈答用までいろいろな麺を揃えていますので、ぜひお越しください。2階の飲食エリアは、来春オープン予定です。

そして年末は年越しそば!
『宗近』のおいしいおそばで一年を締めくくってください。

建築家 伊藤瑞貴
坂井市生まれ。2008年に『伊藤瑞貴建築設計事務所』を立ち上げ、2019年には同事務所を中心とした 『株式会社hplus(エイチプラス)』を設立。
「つながりのデザインで、地域に+happiness。」というパーパスのもと様々な事業を展開。2022年10月に新社屋が入る複合建築『h+BASE』(福井市)を完成させた。 “つながり”を大切にした、憩う・働く・買う・住まうが集まった場所で、伊藤さん曰く、「いろんな人と出会えて、とても楽しいです」とのこと。
https://h-plus.biz


宗近製麺(むねちか)
【住所】福井県越前市北町45-63-1
【電話】0120-22-3139
【時間】[1階物販エリア営業時間]10:00〜16:00(水・日曜休) ※12月28日は営業 
【年末年始】12月31日〜1月4日まで休業
【HP】あり





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