2026/09/12
9月に入り、季節は少しずつ秋へと向かっています。そんな今だからこそ、ふと振り返りたくなる夏の記憶。福井を拠点に活動するシンガーソングライター・大越佑華さんが7月にリリースしたミニアルバム『夏のショートフィルム』には、夏の何気ない瞬間や心に残った景色が、歌とピアノで丁寧に描かれています。作品に込めた思いや、楽曲が生まれた背景について伺いました。

――現在、シンガーソングライターとして活動されていますが、歌や音楽に興味を持ったのはいつ頃からだったのでしょうか。
幼いころからずっと歌うことが好きで、ピアノも4歳から習っていました。中学生の時に、母が趣味で書いた歌詞があって、そこにメロディーをつけてみたのが、曲作りのきっかけです。その後、少しずつ作詞作曲をして、大学生の時にFM福井さんの番組で弾き語りで生演奏をする機会があり、それをきっかけに本格的にライブなどの活動を始めました。生放送で、あまり経験のない弾き語りをするのはとても緊張しましたが、その時、自分の曲を弾き語る楽しさを初めて感じました。

――ミニアルバム『夏のショートフィルム』は、どのような経緯で制作されたのでしょうか。
本当は去年の夏前にアルバムを作りたかったんです。気づいたら夏の曲が何曲かあったので、これでアルバムを1枚作りたいと思っていて。でも、間に合わなくて(笑)。「来年は絶対やる」って決めて、今年リリースしました。1年あったので、その間に新曲も作ることができて。全7曲が収録されているんですが、3曲目の「初夏の風」と5曲目の「Resonate」は新曲になります。
――「夏の熱気をやさしく包み込む短編集のような一枚」と表現されていますが、歌詞を書くときに大切にしていることや、言葉を選ぶうえで意識していることはありますか。
私、自分の経験からしか歌詞が書けなくて。実際に見た景色とか、そのときに感じた気持ちとか、感情と景色が重なった瞬間に浮かんだものが、そのまま曲になることが多いんです。あまりテーマを決めて書くタイプではなくて。その場で感じた静けさだったり、空気感だったり、景色の雰囲気だったりが心に残っていて。そんな感覚を言葉にしたいなと思いながら、歌詞を書いています。自分の中にある感覚とか感情というか、そういうものから離れた言葉は、あんまり使わないかもしれないです。できるだけ自分が本当に感じたことに近い言葉を選ぶようにしています。

――今回のレコーディングで印象に残っていることはありますか。
今年の2月頃から本格的にレコーディングを始めて、3〜4か月ほどでひとまず完成しました。この夏に雑貨店をオープンしたのですが、その準備とレコーディングを並行して進めるのが大変で(笑)。レコーディングはすべて自宅の寝室で、自分自身で行なっています。特別な防音室があるわけではなくて、本当に普通の部屋で録っているんです。何年か前に、福井市にある「TERRA studio」の久保顕理さんと知り合って、レコーディングの方法を教えていただきました。それ以来、録音は基本的に自分で行なっていますね。
――最後に、『夏のショートフィルム』をこれから聴く方へメッセージをお願いします。
前作の『光』は、葛藤の中で光を求めながら、自分自身を模索する中で生まれた曲たちを収録した作品でした。一方で『夏のショートフィルム』は、夏の何気ない瞬間を5つの短い物語みたいに切り取った作品になっています。気づけば猛暑もおさまり、夏は終わってしまいましたが、夏を思い出しながら、心地よい気分で聴いてもらえたらうれしいですね。

9月26日(土)には、JR芦原温泉駅西口にある交流施設「アフレア」にて行われる「観月 音night 2026 ~中秋の名月 前夜祭~」に出演します。大越さんの歌声を間近で楽しめる機会。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
■セルフライナーノーツ
01.気配
街の音を録音して、そこに鼻歌を重ねたら、日常の空気感が出るんじゃないかと思ったのが始まりです。「こういう曲を作りたい」というところから考えた、目的先行の曲です。
02.初夏の風
半年以上かけて作った曲です。兄と夜にドライブをしていて、清水町の細い道を走っていた時に感じたことや、風の柔らかさからイメージが広がっていきました。あの時の空気や感情を、そのまま曲にしたような感覚です。
03.ソーダ
7年前に作った曲です。暑い夏の日に、外で瓶のソーダを飲んだことから生まれました。そのときの細かな夏の情景や記憶がたくさん詰まった曲です。夏をテーマにしたアルバムを作るなら、この曲は絶対に入れたいと思い、今回収録しました。
04.夏の庭
自宅の窓から見える小さな畑が荒れ果てているのを見て、以前、おばあちゃんが手入れしていた頃のことを思い出しました。人の手が離れると、自然は少しずつ姿を変えていく。その儚さを感じたことから生まれた曲です。
05.Resonate
岐阜の友人の結婚パーティーに行った時に、初めて鵜飼いを見て生まれた曲です。当時、自分自身が何をしてもしっくりこないような時期だったんですけど、鵜飼いの凛とした景色を見た時に、その景色と自分の感覚が共振するような瞬間があって。「Resonate(共振する)」というタイトルには、そんな感覚を込めています。
06.夜明け
「Resonate」と同じコードで弾いた、短いピアノ曲です。「Resonate」から最後の「日々に」へつながっていくストーリーの中で、少しずつ景色が変わっていくようなグラデーションとして入れました。
07.日々に、
ある映画を観て、その余韻がなかなか取れなくて。その感覚のまま曲を作り始めたのが「日々に」です。映画を観た後に残った気持ちが、そのまま曲になったような感じです。
PROFILE
大越佑華(おおごし・ゆか)/
福井県出身。 儚くあたたかい歌声と、やわらかさの中に静かな強さを宿した表現を持つ。 日常の気配や身体感覚から掬い取るように生まれる楽曲は、感情を誇張せず、今ここにある瞬間をそっと描く。
【SNS】Instagram X
【YouTube】@utauta3624
【CD取り扱い】オンラインショップ 雑貨店トキノイロ
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