こんにちは! ケニア在住の、久保唯香です。
2020年もどうぞ、よろしくお願いいたします。
さて、福井県に住んでいた頃、登山経験を積むため石川県の白山に挑戦した私。前回はケニア最高峰のケニア山(レナナ峰4,985m)登山の様子をご紹介しました。
前回記事はこちらから↓
5,000メートル級!
大陸2位のケニア山にアタックした話
今回、ついに2019年の年末、アフリカ最高峰のキリマンジャロに挑戦。そして…

無事に、山頂5,985m(ウフルピーク)に登頂しました!
そこで今回は、福井県(いや、全国!)からキリマンジャロを目指す皆さんに、登山初心者の私が感じた、キリマンジャロ登山の10のポイントをご紹介したいと思います。最後には登山6日間を3分間にまとめた動画もありますので、興味のある方はぜひ見ていって下さい!
目次
1.圧倒的な自然の営みを体感
2.熱帯から氷河まで
3.道のりがとにかく長い!
4.とにかく(何かと)ツラい!
5.防寒、防水、除湿、そして保湿の準備を
6.ひとりでは登れない山
7.日本から持参したいアイテムたち
8.サファリのススメ
9.トラブル回避のために、事前に知っておきたいこと
10.余裕をもった行程を
11.必見! 登山6日間を3分間にまとめた貴重映像
福井からキリマンジャロ山を目指す方は決して多くないでしょうけれど、私は「実はキリマンジャロ登頂しました」というツワモノのふくい人を数名、知っています…(そこのあなたですよ、ウフフ)。
その節は、「技術的には難しくない」「初心者でも登れる世界最高峰(※)」といった若干微妙なアドバイスありがとうございました(←失礼)。
(※キリマンジャロ山は世界最高の独立峰として知られています。)
それでは早速お届けします!
1.圧倒的な自然の営みを体感
アフリカの醍醐味といえば、圧倒的な自然。ケニア山登頂の際にも、人々が神と崇めるそのいただきに威圧される思いでした。キリマンジャロには現地の言葉で「白く輝く(キリマ)山(ンジャロ)」という意味があります。その名前の由来の通り、その白く輝く姿には終始圧倒されました。
キリマンジャロは3つの主な成層火山から構成されています。最高峰キボ(スワヒリ語で「山頂」という意味。写真上)の目前には、姿かたちが全く異なるマウェンジ山(標高5,151m、写真下)がそびえ立っています。2つの山のコントラストにもため息が出ます。
2.熱帯から氷河まで
標高2,650m地点から登り始めたケニア山に比べ、キリマンジャロの入山ゲート(マラングゲート)は標高1,879mと比較的低いのが印象的でした。標高1,879mから5,895mまで、非常に幅広い植生を楽しめるのが特徴です。
空気中の湿気を吸収するエアプラントがいたるところに繁殖。雨が雰囲気を醸し出します(写真で振り返るのって、なんて簡単なんだろう…雨の登山は大変でした)。
4,000m付近には「ジャイアント・セネシオ」がたくさん生えています。実写版ライオンキングでハリウッドデビューも果たした植物ですが、さすがにライオンはここまで登ってきません(笑)
いよいよ最後のキャンプである『キボハット』に向かって進んでいきます。途中マウェンジ山との間、「サドル」という砂漠地帯を歩いていきます。
視覚的なインパクトは大! なのですが、風や濃霧が発生しやすく、とにかく歩くのがツラい。感動しているどころではありませんでした…。
キャンプで夜を越した翌日、サンライズを背に登っていきます。5,500mを越えると、世界が白くなっていきます。
火口の入口となるギルマンズポイントに登頂すると、氷河が現れました。氷河期から一度も消えることなく蓄積されてきたというキリマンジャロ山頂の氷河は、気候変動の影響で2020年には消えてしまうという説があったようですが、2019年末の時点ではきれいに残っていました。
山頂は真っ白な雪で覆われていました。
3.道のりがとにかく長い!
ここからは少し現実的な、登山のお話しです。
キリマンジャロには6つのルートが開発されています。今回は、設備や山小屋がきちんと整備されていて最も登頂率が高いことから人気の「マラングルート」を選択しました。高度順応日の1日含む6日間のスケジュールです。4日間かけて登り、2日間かけて下山します。個人荷物は16キロまでと決まっていて、限られた物資の中でやりくりする必要があります。また、高地順応日も含めると、6日間で90km近く歩きます。とにかく、登山時間も距離も、長かった!
次ページ↓
しっかりと準備したはずなのに…、
予想外のアレにやられた。
目次
1.圧倒的な自然の営みを体感
2.熱帯から氷河まで
3.道のりがとにかく長い!
4.とにかく(何かと)ツラい!
5.防寒、防水、除湿、そして保湿の準備を
6.ひとりでは登れない山
7.日本から持参したいアイテムたち
8.サファリのススメ
9.トラブル回避のために、事前に知っておきたいこと
10.余裕をもった行程を
11.必見! 登山6日間を3分間にまとめた貴重映像
4.とにかく(何かと)ツラい!
キリマンジャロ登山最大の敵。それは、高山病です。血中酸素飽和度の低下が、頭痛や吐き気、めまいなどの症状を引き起こします。急な高度上昇を避ける、高山病予防薬を服用する、水を大量に摂取するなどの対策があるそうです。
高度3,700mを越えたところから、現地ガイドの指示に従いオキシメーターで血中酸素飽和度を測って体調を管理しました。
96~99%が標準値で、地上で90%を切る場合は異常値、十分な酸素を臓器に送り込めない状態と判断されます。山中では70%に落ち込むことも珍しくありません。ガイドによると、50%台まで落ちた場合は登頂を断念せざるを得ないとのこと。私は幸い、最後まで90%台を維持しました。
検査中の様子。呼気を強めると瞬間的に酸素飽和度が上がっていきます。酸素飽和度は平常値を維持した私も、さすがにサミット中(山頂アタック)にはめまいを感じ、何度か意識が飛びました。
また、山の中では水は貴重品です。約4,400mで森林限界を迎え、以降は水場がありません。
その名も「Last water point」(最後の水場)。
このポイント以降は突如、砂漠に突入します
そして、山中で支給される貴重な水は、なんと川水。煮沸してあるとはいえ、ペットボトルの水との違いは一目瞭然…。山中でおなかを壊す人も少なくありません。
気になる方は簡易浄水器を持参されることをお勧めします
他にも、寒さは堪えました。特に山頂が近くなると、寒さが染みてきます。標高4,750m、最後の山小屋『キボハット』では、ガイドから散々「登頂アタックの間は時間が限られているから、寝て体力を温存するように」と指示されましたが、体温が低下していて、なかなか眠りにつけませんでした。
5.防寒、防水、除湿、そして保湿の準備を
標高6,000m近い山頂では気温がマイナスになります。また、キリマンジャロ周辺には適度な降雨量があります。アフリカ生活中の私は日本のような品揃えには恵まれていない環境にあり、多少の限界はありましたが、防寒防水は万全な対策を講じました。
しかし、除湿と保湿は落とし穴でした。3,000mを越えると気温が下がり、一度濡れた衣服や靴は、なかなか乾きません。湿度も下がっていて、乾燥します。唇は荒れ、登山中に患った咳が悪化しました(おかげで下山後、肋骨を負傷する始末です…)。ぜひ、除湿剤やマスクの携帯、肌荒れ対策なども万全にご準備ください!
6.ひとりでは登れない山
キリマンジャロ入山には、経験を積んだガイドの同行が義務付けられています。今回は登山仲間5人でパーティを組みましたが、メインガイド1名に加え、サブガイド2名、コック、ウェイター(身辺係)、ポーターなど総勢16名が同行、最終的には21人の大所帯となりました。
信じられないスピードで山を登っていくポーターたち。信じがたい荷物の持ち方ですが、きちんとしたリュックを背負う我々をどんどん追い抜いていきます。勝負する気もありませんが、一生勝てる気がしません。
「All the way to the top!(すべては登頂のために)」と励まし続けてくれました
単独の登山客もいらっしゃいましたが、かならずガイドやポーターがついているため、1人でのキリマンジャロ登頂はあり得ません。
私は、体力的にも精神的にもきつい瞬間を励ましてもらい、エネルギー不足のときには食べ物を恵んでもらい、お互い客観的に体調を観察しあいました。感動を共有したパーティなしには、キリマンジャロ登頂はあり得なかったと感じています。
キリマンジャロは、決してひとりでは登れない山なのです。
全員が「All the way home(すべては家に帰るために)」と呟きました…。
次ページ↓
これだけは日本から持ってくるべき!
私の愛用アイテム
目次
1.圧倒的な自然の営みを体感
2.熱帯から氷河まで
3.道のりがとにかく長い!
4.とにかく(何かと)ツラい!
5.防寒、防水、除湿、そして保湿の準備を
6.ひとりでは登れない山
7.日本から持参したいアイテムたち
8.サファリのススメ
9.トラブル回避のために、事前に知っておきたいこと
10.余裕をもった行程を
11.必見! 登山6日間を3分間にまとめた貴重映像
7.日本から持参したいアイテムたち
隣国のケニアに住む私にとっては、日本ではふつうに調達できる物資であっても、こちらでは大変な貴重品でした。
中でも、
・携帯カイロ(特に足の裏に貼るもの)
・行動食(特にゼリー飲料。日本のクオリティが素晴らしい)
・スナック菓子(日本人にはやっぱりせんべい)
・インスタントスープ(味噌汁は世界を救うと確信しました)
・常備薬(頭痛薬、整腸剤など)
・分厚い靴下(靴下くらいあるだろうと思っていたらありませんでした)
・ジップロック
これらには大変助けられました。
逆に、
・高山病予防薬(ダイアモックス)
・携帯充電器(むしろ電圧が合わず現地で充電できないこともありますので、現地調達をおススメします)
・高機能でない衣服(セーターやフリース素材の上着など)
・預け用のバックパック(レンタル可能)
これらはアフリカでも調達可能です。
8.サファリのススメ
キリマンジャロは登山で有名ですが、実は山を含む一体が「キリマンジャロ国立公園」に定められています。また車で4~5時間のところにはサファリで有名な「ンゴロンゴロ自然保護区」があります。東アフリカらしい、素晴らしいサファリを体験することができます!
下山後、「ンゴロンゴロ自然保護区」に立ち寄りました。東アフリカのサファリをおススメする理由は、また後日ゆっくり書きますね!
9.トラブル回避のために、事前に知っておきたいこと
タンザニアでのアクティビティ(登山、トレッキング、サファリ等)は、アフリカ文化はもちろんのこと、欧州の習慣を脈々と受け継いでいます。
実は日本人だけではなく、アジア出身者が全般的に苦労する習慣のひとつに、「チップ」があります。本来は、経営者や会社に支払う規定料金とは別に、心づけとしてサービス提供者に直接手交する現金を指しますが、現在はチップの支払いが慣習化しています。
キリマンジャロ登山の場合、ガイドやコック、ポーター、それぞれの基準レートにのっとり日数計算のうえ各人に直接手交するか、登山者1人あたり250~500アメリカドルといった一定額をメインガイドに手交するという方法があります。下山後のトラブルを回避するために、登山前にガイドやポーターの数を把握し登頂したらきちんとチップを手交することが重要です。
10.余裕をもった行程を
欧州の方々は長いときには休暇を1ヶ月以上も取得することがあります。旅行中は毎日何かやることが決まっている日本の慌ただしい旅行文化にはなじみづらいのですが、不測の事態が頻発するアフリカであまりにスケジュールを組むと、旅行を満喫できないこともあります。
アフリカで、特に登山のように自然を相手に楽しもうとする場合は、ある程度余裕をもって旅行されることをお勧めします。
目次
1.圧倒的な自然の営みを体感
2.熱帯から氷河まで
3.道のりがとにかく長い!
4.とにかく(何かと)ツラい!
5.防寒、防水、除湿、そして保湿の準備を
6.ひとりでは登れない山
7.日本から持参したいアイテムたち
8.サファリのススメ
9.トラブル回避のために、事前に知っておきたいこと
10.余裕をもった行程を
11.必見! 登山6日間を3分間にまとめた貴重映像
11.必見! 登山6日間を3分間にまとめた貴重映像
少々画質が粗いですが、持参したGoProでの動画になります。
さて、登頂までの10のポイントいかがでしたでしょうか?
アフリカ最高峰、キリマンジャロ登頂。決して簡単な挑戦ではありませんが、達成感も並大抵ではありません。好奇心旺盛なふくい人の皆さん! 次の長期休暇に、挑戦してみてはいかが!
久保唯香(くぼゆいか)
1991年 神奈川県生まれ。2016年から約2年、福井貿易情報センターにて勤務。幼少期にお菓子目当てで参加したちびっこマラソンがきっかけで陸上が好きに。専門は走り幅跳び。高校卒業後は世界を旅していたため一時休戦。就職後趣味でマラソンを始め、福井マラソン(ハーフ)でも入賞するほど。現在はナイロビにてジェトロ職員として活躍中。好きな食べ物は納豆。
日々URALAからのお知らせをLINEで受け取れます!
