2020/03/10
北前船の寄港地として栄えた三国湊には、かつて遊郭や料亭が立ち並ぶ花街があった。迷路のような細い路地を歩くと、そこかしこに往時の名残りが見られる。その一角に建つ『与平』は明治20年にはこの地で商売をしていた文献があり、130年以上の歴史を有する。当初は魚料理の店を営み、3代目が鮨屋に転向したという。
1階はカウンター5席とテーブル席1つの小ぢんまりとしたしつらえだが、4代目の前田幸二さんは「このくらいがお客さんとちょうどいい距離で仕事ができるんです」と微笑む。時には常連が団体で訪れて立ち食い状態になる日もあるが、みんな前田さんを囲むように集まり、家族のように和気あいあいと過ごす。この気取りのなさが店の隅々にしみわたり、何ともいえない心地よさを醸し出している。
シャリの旨さにこだわる前田さんは、コシヒカリでシャリを炊く少数派だ。一般的にコシヒカリは鮨に不向きとされるが、炊き方や握り方を工夫して、独自の技でコシヒカリ100%の鮨を握っている。三国港でいい魚が揚がると網元が一番に連絡をくれるため、ネタもシャリの旨味に負けない上物が揃う。
その味を堪能できるのが「地魚コース」。手頃な値段で11種類のネタが楽しめるので初めてならこちらがおススメ。ネタはその時の仕入れによって変わるが、魚にうるさい地元っ子を満足させてきた前田さんの目利きに任せておけば安心だ。「お客さんと一緒に楽しみながら鮨を握っているから、『また来るよ』と約束してもらえるのがうれしいんです」。店主としての座右の銘は「来る人も又来る人も福の神(店に来る人はみな福を運んでくれる)」。
だからこそ、今日の満足が次の楽しみにつながるよう、気持ちよく食べてもらえる鮨を握るのだと語る。
地魚コース
2500円
大将がその日のおすすめ11貫をおまかせで握る。港町だからお目にかかれる地魚や新鮮な魚介の旨さを味わえる
寿司割烹 与平
【住所】福井県坂井市三国町神明2-1-20
【電話】0776-82-0273
【時間】11:00~22:00 ※来店前に電話で問い合わせを
【休日】水曜
【料金】予算(1人)7000円~
【席数】カウンター5席、テーブル4席、座敷20席
【駐車場】5台
【HP】なし
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