月刊ウララ8月号から真夏に恋しくなる『おとなのアイスコーヒー』をご紹介

　坂井市三国の『ポッセコーヒー』がこの夏、提供しているのは７種類の豆から週替わりで、それぞれの個性や特徴が楽しめるシングルオリジンの水出しコーヒーだ。
　カウンターの一角に設けられた愛用の水出しコーヒー器で10時間かけて抽出したコーヒーはクリアでしっかりとした味わいと、まろやかでさわやかな酸味が心地いい。
「焙煎を浅めにすることで、それぞれの豆の香りや酸味を際立たせています」と、オーナーの西友規さん。その言葉通り、薄口のグラスを通して豆の果実味が口の中に広がる。
　冷たいからこそ試されるバリスタとしての知識と経験。あらためて気づかされるコーヒーの奥深さはお酒のたしなみにもどこか似ている。

　大野市の城下町にある『モモンガコーヒー』では、夏季限定の水出しアイスコーヒーを３種類提供している。このアイスコーヒーは荒島岳から長い歳月をかけて大野市街に流れる超軟水の地下水を使用している。“名水”と評されるその水は、「まるで果物にくぐらせたような甘さ」と、オーナーの牧野さん。
　そんな良質な水をハリオ製の『ウォータードリッパー』という器具で２秒に一滴ずつ豆へと垂らし、抽出される水出しコーヒーは８時間でわずか１ℓのみ。そうして出来上がったコーヒーは飴色に輝き、ワインやチョコレートを彷彿させるような芳醇な香りを纏う。飲み口は甘味やコクが爽やかに広がり、夏の暑い日にはぴったりの味わい。

　福井駅前の路地に佇むこの店では、コーヒーの抽出に「ネル」と呼ばれる布製のフィルターを使う純喫茶スタイル。ネルはペーパーフィルターと比べ、豆の深部までお湯を浸透させることができ、紙だと吸収されてしまう旨味や油分も抽出される。またその仕上がりは、アイスコーヒーでも驚くほどの香り高さ。「ネルは使っていくうちに生地が馴染み、味も変わってくるのでデニムのように育てる楽しみもあります」と、オーナーの伊藤雅幸さん。
　さらにこの店ではドリップポットからお湯を一滴ずつ丁寧に垂らす「点滴ドリップ」で抽出を行なう。「ネルも点滴ドリップも純喫茶のカルチャー。そのマインドを取り入れて今の抽出方法に辿り着きました」と、歴史ある文化を大切にする伊藤さんのコーヒーは味わい深い。

「エアロプレスで淹れると、アイスコーヒーも甘みやコクが強く出て、豆の味が分かりやすいのが面白いですね」とは、『カメイ珈琲店』のオーナー、竹森政人さん。空気圧を利用してコーヒーを抽出するため、ほんの少し力が必要になるけれど、その分ドリッパーで淹れるよりも豆の個性がくっきりと表れるという。
　まるで注射器のようなユニークな形状をした「エアロプレス」は、２００５年にアウトドアスポーツメーカーが開発した異色のコーヒーメーカー。軽くて持ち運びがしやすく、ドリップ技術がなくても安定した味を抽出できるのが特徴。そんな趣味感もたっぷりの器具でコーヒーを淹れる時間が、日常を楽しく彩ってくれそう。「エアロプレス」はお店でも購入することができる（４４００円）。

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