
コロナ禍になって3回目の春、感染対策の中、人も街も動き出してきました。宗近さんからは新しい試み『宗近のトリセツ』の報告が! チラシではなく冊子もの。制作の中心は宗近さん社員の稲木さん、デザインは県外のデザイナーに依頼。実はこのデザイナーが商品のパッケージデザインも担当しているとのこと。
そこで今回は、『宗近』さんのデザインについて、デザイナーの山内貴博さんと大村潤さんを交えてお話をお聞きしました。
――パッケージデザインを担当するデザイナーは、東京の方々とお聞きしましたが、出会いのきっかけを教えてください。
宗近さん(以下、宗近):私がかつて東京で音楽をやっていた時(Vol.1参照)、好きなアーティストのCDジャケットやリーフレットなどを手掛けていたのがFAVGEAR(ファヴギア)という事務所の山内さんと大村さんでした。自分のレコードレーベルもぜひ、このお二人にお願いしたいと思ってお会いしたのが始まりです。
山内さん(以下、山内):初めてお会いしたのは、とあるクラブイベント。真っ暗闇の中で、お互いの表情も分からないまま話したのを覚えています。アルバムリリースの1年前、2005年でしたね。
大村さん(以下、大村):私は山内さんから話を聞いた後の打ち合わせで初対面。精力的に頑張っている若者がいるなぁと感心していました。
――山内さんと大村さんは、avexのデザインも数多く手掛けられていたとのこと。熱い想いだけではすぐに会えない、なかなか遠い存在だったのでは?
宗近:そう! 私にとっては雲の上の人でした。でも、どうしてもお願いしたくて…。じゃぁ行くしかない、行けば何とかなるかなと。若気の至り、怖いもの知らずによる突撃です(笑)。
山内:一応、知人の紹介でしたが、宗近さんの前情報はそれほどありませんでした。でも、一緒に仕事をするうちにチャレンジ精神が旺盛で、やりたいことや方向性が明確。仕事はやりやすかったですね。
大村:確かに。社会人でありながらも、大好きな音楽活動にも突き進んでいくという感じで。
宗近:抽象的な言葉を伝えただけで、もの凄いデザインが仕上がってくるんです。そしてそれが回を重ねる度に精度も上がっていく。だから、いつだって大きな修正はなかった。
大村:色のことで少し変更があるくらいだったかな。
――音楽活動の最中、宗近さんが家業を継ぐため帰福すると聞いた時、どう思われましたか?
大村:実家が製麺所であることも知らなかったので、とにかくびっくりの一言ですよね。音楽はどうするの?って感じで。
山内:奈良に修行に行くことは聞いていました(Vol.1参照)。私も宗近さん同様、地方都市の長男で上京。“好きな音楽で身を立てていくのは難しい”ってことをしっかり考えているんだなぁと感心しながら、いろいろと思うところがありましたね…。
宗近:修行と音楽を両立できると思っていたんですけど、実際はかなり大変でしたね。
山内:細々とでもいいので、音楽はやって欲しいなと。それは今でも思っていますよ。
――音楽は一旦、お休みになったけれど、デザインの仕事は途切れなかった。
宗近:お二人との関係を途絶えさせたくない! その想いだけで弊社のパッケージデザインもお願いしました。
山内:今までジャケット以外にもいろいろなデザインをしてきましたが、食品パッケージをゼロから始めるのは初めてでした。
大村:CDジャケットはビジュアルが強くて平面の印刷物ですが、食品パッケージは立体物で仕上がってくる。それがおもしろいし、宗近さんが送ってくれた商品陳列棚の画像を見て、「こんな風になるんだなぁ」とトータル的な見方も出来たりして、とても新鮮でした。
宗近:いろいろなデザインをお願いしていたんですが2018年、お二人が所属するFAVGEARが解散することになってしまって。デザインはどうするんだろうかと、本当に不安でした。
山内:解散後、大村さんと私はそれぞれ別の会社に勤務していましたが、約2年前から同じ会社に所属。引き続き二人で「宗近」のでデザインを担当しています。
大村:所属先が変わっても、デザインに対するスタンスは今も昔も変わっていないですね。
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――お二人が最初に手掛けたパッケージデザインは何でしたか?
宗近:「三代目宗近そば」の1人前のパッケージです。アバンギャルドでサイバー的、CDジャケットっぽくて、とにかくカッコいい!
山内:“高級感”というリクエストに加え、宗近さんのCDジャケットで使用した赤と黒を組み合わせました。そこにゴールドを加えることで、よくある和風なデザインではなく質感も感じられるようにまとめました。
大村:いくつか手掛ける間に、宗近そばのベースデザインは出来てきましたよね。それをベースに、いろいろな人に手にとってもらえるような、時代が変わっても普遍的なデザインであるようなデザインを心がけています。
山内:どこかにエッジが立つような特徴を持たせること、そして人の目に留まる要素を入れるようにしています。
宗近:どのデザインも好きなんですが、中でも「中華そば」はとても気に入っています。高級路線ではなく、昔ながらの感じでありながら洗練されたイメージもある。先ほど大村さんがおっしゃっていた“普遍的”な部分がある。私の手書きの指示書が、こんな風に上がってくるって、本当にすごいなぁと。
大村:「中華そば」は私が担当しました。打ち合わせの時に、“レトロ感”というキーワードをいただき、レトロだけじゃないレトロフューチャー的なデザインを考えました。色は赤をベースに太麺を青、冷やし中華を緑に展開。あまり暗くならないような色を選びました。
山内:レトロだけれど古くなりすぎない、モダンでフラットな感じでまとまっている感じが良いですよね。パッケージ完成後に食べましたが、緑色のパッケージの太麺はおいしい、最高です!
大村:私は、赤いパッケージのちぢれ麺が好きですね。
――最近完成した「宗近のトリセツ」についての話を聞かせてください。
宗近:商品を売るだけでなく、お客様とのつながりをもっと大切にして、より濃いコアなファンを作りたい。人と人とのつながりを作りたいというのが、制作のきっかけです。アナログなコミュニケーションですが、それを通じて私たちを好きになって欲しいなぁと。
山内:お話しをいただいた時、深掘りしたカタログで、他にはない良い試みだと思いました。大村が担当しました。
大村:久しぶりのエディトリアルデザインで嬉しかったし、楽しかったですね。年配のお客様も見るカタログかつ、読みもの的な冊子にしたかったので、シンプルなデザインをベースにしました。そして、写真は大きめに使ったり、文字も大きく読みやすさも重視しました。
宗近:原稿は私と編集担当の稲木がライティング、とあるディレクターを起用して全体的なディレクションをお願いした後、大村さんにお渡ししました。
大村:文中、方言が多くてローカル感があるなぁと。それが宗近さんがおっしゃるコアなファンを作るための“コミュニケーションツール”であり、町に根ざしている感じを表していて、それがデザインに生かせたかなぁと思っています。
宗近:方言って、リアルな感じなんですよね。
山内:郷土の料理が分かり、それが宗近の麺で作ることもできる。レシピもあるので楽しいし参考にもなる冊子です。
宗近:おかげさまで評判は上々! “宗近家”の良いところ、アットホームな部分が表現されているのが良いという声をいただいています。
――冊子の次なる新しい試みは直営店。今年中に開店の予定です。
山内:以前から「店を出したい!」という話は聞いていて、出店時にはいろいろなツールのデザインを担当できたらと思っていました。
大村:これまで、常にやりがいのある仕事をさせていただいているので、宗近さんが何かしらチャレンジする時にはデザインで協力して、一緒に新しいモノを作り上げていける存在でありたいと思っています。
山内:「宗近」のそばは、ふるさと納税の返礼品なども含めて(Vol.8)ポテンシャルのある商品が多いので、デザイン面からでも知名度をさらに上げていくお手伝いをしていきたいですね。
宗近:もちろん、店に関するいろいろなモノを相談するつもりです。お願いします! かれこれ15年くらい一緒に仕事していて、オンラインミーティングは10数年前から導入。お二人とは“阿吽の呼吸”で、素晴らしいパートナーだと勝手に思っています(笑)。だから、これからもずっと「宗近」のデザインをお願いできる環境にいてくださいね。
アートディレクター兼デザイナー 山内貴博さん
新潟県出身。地元ではへぎそば(Vol.3)が有名。「宗近」では「三代目宗近そば 太打ち」と「中華そば 太麺」がお気に入り。「へぎそばに比べて香りがあって、食感も楽しめる。辛味大根をすりまくって味わっています!」
デザイナー 大村潤さん
長野県出身。言わずと知れたそば王国で育ち、「宗近」で初めて福井のそばの存在を知る。「福井にもこんなにおいしいそばがあることに驚きました」
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