【世界から発信! ふくい人滞在記。】

[世界から発信inケニア④]5,000メートル級!大陸2位のケニア山にアタックした話

2019/11/14

― Day 3. ―

あくる日の朝、午前2時。電球1個に数人が群がり、クッキーとホットチョコレートをお腹に入れます。外は極寒。山頂はマイナス10度に達すると言います。しっかりと重装備を・・・ん?

久保唯香
山小屋の朝は真っ暗です。
登山者にも一体感が生まれます

サングラス…私のサングラスがない…。
どこを探しても、ガイドに訊ねても、コックにお願いしても、誰に聞いても、ない。ご来光を拝む為にサングラスを持ってきたといっても過言ではないのに、そのサングラスが、ない…!ここはアフリカで、そして山の中です。手元にないものは無くしてしまったと同じ。サングラスは諦めることに。

気持ち新たに、ヘッドライトをつけて、いざ登頂開始です。午前3時。写真には納められませんでしたが、登頂前に見た、満点の星空に照らされた山頂の偉大な姿を、私は生涯忘れることはないでしょう。

一歩一歩、足場を確認しながら登っていきます。道とは言えないようなツルツルした岩肌を、スタスタと登っていくガイドにしがみつくように、進んでいきます。徐々に、踏ん張る足の裏が痛んできます。暗闇の中を登る時間が、何時間にも感じました。

空が少しずつ明るんできます。助かった…と思ったのもつかの間。自分が置かれた状況を把握した瞬間、絶句します。私たちは足を踏み外せばひとたまりもないような岩肌を歩いていたのでした。腰が引けてきます。見なきゃよかった…。

いよいよ日の出。アタックも最終局面にさしかかります。この辺りから、前方を歩いていた登山者が先に進めず、うずくまる様子を見かけるようになります。ここからはステッキも不要に。

むむ、これはどこかで見たことがある光景…、おお、これは所謂、ロッククライミング…?足の裏だけでなく、今度はモコモコに包まれた指先にもぎゅっと力を入れて、上を目指します。

山頂が近い。鎖を両手で掴み、力を振りしぼって身体を山頂に押し上げます。すると目の前に畳数畳程度の平地が現れました。




ケニア山レナナ峰4,985m。アタック成功……!

久保唯香
登頂直後の私です。
嬉しさと同時に「朝日」を拝むぞ!と意気込む

青白い「ケニア山」の最高峰が私たちを歓迎しました。瞬間、山が赤く燃え上がります。日の出だ…!背後から太陽が、顔を出し始めたのです。

久保唯香
山頂から見た朝日。圧巻でした!

必死でカメラを回しますが、みるみるうちに電池が減っていきます。ダメだ、極寒が過ぎる…!携帯はとうの昔に動かなくなっていました。そのうち、手の感覚がなくなってきます。カメラと手、どちらが先にギブアップするか、いい勝負。は、は、早く、上がりきってくれ…!

ガイド「もう無理だ、寒い。降りよう」
私「いや、ちょっと待って。まだ太陽上がってないから!上がるまで」

押し問答を3回ほど繰り返し、やっと太陽が完全に上がりました。

久保唯香
朝日で山頂と顔が赤く染まります。もう感動。

我々の体温も限界を迎え、下山に同意。峰での滞在時間は体感で10分ほどでしたが、日の出の瞬間を頂きで迎えられたのは、奇跡的なことでした。







ところが、次に待っていた下山が、最大の試練でした。感動の日の出もすっかり忘れ、登ってきてしまったことを後悔するほどの急斜面。乾いた岩肌に足がとられ、とにかく体力が消耗していきます。

久保唯香
下ってきた山道がこちら。
上りより下りの方が難易度が高かったです

Congratulations!(おめでとう!)

やっとの思いで山小屋にたどり着くと、登頂を翌日に控えた登山者やポーター、コックが、私達に声をかけてきます。「You did it!(やったね!)」一緒にアタックした登山者とも再会を果たします。達成感と歓喜に心が踊りました。

そしてもう一つ奇跡が。山小屋に、無くしたはずのサングラスが、届いていたのでした。心優しい登山者が登山道で拾ったとのことで、山小屋に届けてくれていたのでした。喜びもそこそこに、そのまま下山します。待っていた車で、3日目の晩に、ナイロビに帰りました。

久保唯香
歩いて来た道を振り返れば、絶景が広がっていました!

後日。
「ケニア山、難易度が高いと聞くけど、実際どうだった?」という質問が。

ビールのラベルに惹かれたという動機はさておき、今回の経験には、「圧倒された」という言葉が一番似合います。「私は圧倒的な自然を前に無力だった」という方が正しいでしょうか。そりゃ、ビールのラベルになるのも納得ですね。

※登山にあたり、ガイドおよび旅行代理店の指示に従い必要な用具を揃え、事前に高山病予防薬を正しく服用したことを補足しておきます。

以上、私が挑んだ「ケニア山」登頂の物語でした!ぜひ挑戦してくださいね。とは言いませんが、スケールの大きいことに挑戦すると、達成感はものすごいですよ!私もまだまだこれからなので、様々な面でレベルアップしていきたいです。それではまた!


久保唯香

久保唯香(くぼゆいか)
1991年 神奈川県生まれ。2016年から約2年、福井貿易情報センターにて勤務。幼少期にお菓子目当てで参加したちびっこマラソンがきっかけで陸上が好きに。専門は走り幅跳び。高校卒業後は世界を旅していたため一時休戦。就職後趣味でマラソンを始め、福井マラソン(ハーフ)でも入賞するほど。現在はナイロビにてジェトロ職員として活躍中。好きな食べ物は納豆。



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