コト消費の時代はもう古い。これからのインバウンドは“タメ消費”だ|生活藝人・田中佑典

2020/02/14


田中さんが考える
“インバウンドの在り方”とは


2.自分事にする/させる。

アジア微住中の写真。
観光ではなく、実際その土地での暮らしを味わう

「関係を構築し合う方法は無限にありますが、中でも「微住」は効果的だと思います。
実際、僕はアジア各国を「微住」して、各地の暮らしを2、3週間体験しました。やはり短期的な暮らしはマンネリ化せず、毎日新たな発見があります。
だんだんと自分の中で楽しくなっていき、最終日には「あぁ、あれやっとけばよかった」って思うことが多々ありました。その結果、もう一度そこに行くという一期三会の関係が生まれました。」

ポイントとしては「同じ場所での普通の暮らしが楽しくなる」という点だ。
一般の感覚としては、見たことのない観光地を巡る旅行は楽しいに違いない。とすると、同じ場所での暮らしが楽しいのはどうしてか。

それは、与えられたものではなく、自己啓発的な“自分事”になっているからだろう。ここでの暮らしにお世話になっている人のタメに自分もなにかしようというように、今考えていることが、能動的な“自分事”になっているかが重要なのだ。

自分事になればその熱で周りを巻き込むことができ、相手との関係性が生まれる。関係性が生まれれば、ものごとは完結せずに続いていく。


具体的な例を述べると、
台湾の建築家が微住で福井にやってきて、土地を知る。文化を知る。そしてその地に福井と台湾の文化を融合させた建築物を計画する。微住でお世話になった人のタメでもあるし、これから福井を訪れる人のタメだ。

これは当然自分事となり、台湾に戻ったあとでも「福井にこんなの作ったんだ。一緒に行こうよ!」となるわけだ。

これは福井で、同じ用途の建物を都会のデザイナーにお願いして建て、「さあ皆さん、おいで!」と呼びかけるより何十倍もの説得力、そして魅力があるだろう。

ながながと述べたがこれが田中さんの考えるタメ消費。コト消費に走るのではなく、訪れた人を自分事にさせて、一期三会以上の関係性が築きあえるコンテンツ、土壌づくり、足場を整えることが今、最も重要なのだ。



大野と東郷で進むインバウンド


右側がデザイナー AJとその息子

そして福井でこのタメ消費が現在進行形で進んでいるところがある。それが「青花魚」刊行の際に、台湾の編集チームが微住でお世話になった大野市大野地区と福井市東郷地区だ。

当時それぞれが自分事にし、一期一会で終わらなかったというわけだ。

東郷地区では微住を通して、今でいう「ゲストハウス」を作ろうという動きがあるが、田中さんは、そもそもゲストハウスという名前から変えていかないといけない。ゲストもホストもない状態。お互いにもてなしあう関係性がそれぞれを自分事にさせるのだという。計画はこれからだ。

そして大野地区では先ほどの「タメ消費」の例がそうなのだが、実際に台湾からデザイナーのAJが訪れて、廃ビルをリノベーション、新しいホステル建設の計画が進行中だ。

大野でのホステル制作場面。
台湾から設計チームが微住して作業を行なっている

大野という町に住み込み、空気感を感じそれを踏まえてデザインに落とし込む。ただ素敵なホステルではない、台湾のDNAが注ぎ込まれたものになるはずだ。予定では2020年春には完成する。

世界に置き去りにされない福井の新たなインバウンド、福井らしいインバウンド、“コト消費に変わるタメ消費”、それはもうすでに始まっているのだ。

<プロフィール>
田中佑典(たなかゆうすけ) 
1986年福井市生まれ 日本大学芸術学部文芸学科卒業。学生時代に訪れた台湾の景色・文化に魅了されて以来、日本と同国を繋ぐハブとして様々な活動に貢献。現在は台湾だけではなく、アジア全体にその幅を広げ、その土地に2週間ほど滞在する、観光以上、移住未満の“微住(びじゅう)”を実践、雑誌「ソトコト」でも連載中。
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