敦賀湾に面した風情漂う舟溜りや港町ならではのレトロな通り、歴史の面影が残る町家が佇む敦賀市相生町。そこにはこの街だからこそ生まれたグルメがある。地元の人々や観光客から愛される味と共に街に息づく歴史と文化を紹介する。
歴史と文化を知る、味。
恵びす大黒丼〈松〉

みんなで力を合わせて!復活を遂げた、歴史ある縁起担ぎ。
一年の始まりを占う行事として国の無形民俗文化財に指定されている「夷子大黒綱引き」。400年ほど続く、歴史ある伝統行事は3年前に住民の高齢化や担い手不足から継続が困難となり、休止となったという。
しかし、「伝統を継続してほしい」という声が多数寄せられ、敦賀市内で活動する複数の団体が立ち上がった。その団体のひとつである『THAP』の寺田さんは「夷子大黒綱引きの休止が新聞で発表された時は驚きました」と、振り返る。休止の発表後は「何か力になりたい」と、行政に掛け合い『敦賀西町の綱引き伝承協議会』を発足。翌年再開にこぎ着けた。
復活を果たした新生・夷子大黒祭りは今年で3年目を迎え、地元の人々の協力を得ながら伝統を守り続ける。「今後の課題は継続と伝承。そのためには、より一層地元の方々との連携を図り、若者にもっとこの伝統行事を知ってもらいたいですね」と、寺田さん。敦賀市内の中学生に大綱作りを参加してもらうなど、伝統に触れる機会を設け、より地元の人々の心に根付く伝統行事になるよう、仕掛けづくりに奮闘中だ。
食で歴史と文化を。丼ぶりに込めた街づくりの想い。
海と山の恵みを満喫できる二つの丼ぶりを組み合わせた「恵びす大黒丼」。地物の魚を豪華に盛りつけた「恵びす丼」は魚介の旨味が凝縮された海鮮丼だ。一方、「恵びす丼」のごはんが酢飯であるのに対して「大黒丼」は、お米本来の美味しさを味わう白飯の丼ぶりで、その上にはごはんのお供を添える。
この丼ぶりを考案した、店主の谷口さんは近隣で別の飲食店も営む。その店で「海の幸を求めて観光客が敦賀に足を運んでくれる」と実感し、その受け皿を増やしたいと、この店を始めた。そして豊作豊漁を祈願する「夷子大黒綱引き」を海と山の幸を堪能できる丼ぶりを通じて知ってもらう機会になればと、“食”の観点から街づくりを担う。
これが由来!
相生町で行なわれる年頭の伝統行事「夷子大黒綱引き」。西町通りと呼ばれる細い路地に集まり、夷方と大黒方に分かれて大綱を威勢よく引き合う。夷方が勝てばその年は豊漁、大黒方が勝てば豊作と伝えられる
敦賀魚河岸 海鮮丼 うお吟
【住所】福井県敦賀市相生町21-3
【電話】0770-21-2328
【時間】11:30〜15:00(14:30LO)土・日・祝日は11:00〜
【休日】水曜(祝日の場合は営業)
【席数】13席
【駐車場】共用駐車場あり
【HP】あり
【SNS】Facebook ※うお吟で検索 Instagram
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晴明の朝市
毎月第3日曜日、博物館通りで行なわれる「晴明の朝市」。朝の8時過ぎから商店が集まりだしいい香りが通りを包む。
朝市のはじまり、地元の台所を支えた市場。
相生町では、月に一度「晴明の朝市」と呼ばれる催しが開かれる。早朝から通りに商店が並び、人々が行き交うこの朝市の歴史は大正時代のある人物によって始まった。
大正時代中期、物価が著しく高騰したことにより、生活苦に陥る人々が後を絶たなかったという。その救済のため名乗りを上げたのが、相生町(旧敦賀町富貴)出身の篤志家・清水友吉だ。友吉は私財を投じ、敦賀で初めての公設市場である「群立敦賀朝市場」を建設後、寄付を行なった。この公設市場によって物価が調整され、庶民の生活が安定していくように。地元の人々からは安倍晴明ゆかりの地であることから「晴明の朝市」という愛称で親しまれ、祭日やお正月には、おびただしい人出で通りは身動きがとれないほど賑わった。
しかし大正から昭和へ時代が変化すると戦争が始まり、昭和20年空襲の被害にあった敦賀市街地の大半が焼失。奇跡的にも火災を免れた公設市場は、住宅を失った市民の市営住宅へと姿を変え、歴史の幕を一旦閉じた。
名物「朝市ラーメン」は350円と安価なのも人気の理由のひとつ。テーブルやイスも用意してあるので、グルメや朝市の雰囲気をゆっくりと味わえる
ふたたび賑わいを。朝市に託された想い。
一度は姿を消した「晴明の朝市」だが、平成12年に「賑わいを復活させたい」と、相生町の人々が地元の商店や婦人部、町役員に協力を呼びかけ「晴明の朝市」を新たに再開させた。
この朝市は今年で20年を数えるが、再開当初から毎月出店を続ける商店が多いという。その中でも名物となっているのが、地元のお母さんたちが出店する、「朝市ラーメン」だ。朝でも食せる優しい味わいが人気で、冬場はラーメンで体を温めてから朝市を回るお客が多い。他にも海の幸や山の幸などを売る商店が軒を連ね、人気の店はすぐ品物が完売してしまうため早朝から博物館通りにお客が訪れる。贔屓客や家族連れも多く、地元の人々からは馴染みのイベントとして定着し続けている。
晴明の朝市
【開催日】毎月第3日曜開催
【会場】敦賀市相生町博物館通り
【時間】8:30〜11:30
【問い合わせ】0770-22-2188(晴明の朝市実行委員会)
【駐車場】共有駐車場あり
ここが由来!
晴明神社(せいめいじんじゃ)
【住所】福井県敦賀市相生町8-20
【問い合わせ】0770-22-8167(敦賀市観光協会)、0770-21-2626(敦賀観光案内所)
【時間】9:00〜15:00頃
【駐車場】共有駐車場あり
ゆかりの地で感じる、安倍晴明の飽くなき探求心。
陰陽師として名高い安倍晴明は、天文学や地学の研究のために西暦990年頃から5年間敦賀に移り住んだといういわれがある。なぜ晴明は京の都を離れ、敦賀を研究の地に選んだのかは、敦賀が貿易の街として栄えていたからだという。晴明が用いた陰陽道は古代中国が起源であり、大陸との交流が盛んに行われていた敦賀は、新たな見聞を得るためにうってつけの土地だったといえる。
また、ゆかりの地である相生町には『晴明神社』が存在する。この『晴明神社』は、古来より五穀をつかさどる食物の神である保食神(うけもちのかみ)を祀り、晴明が日夜参拝にこの神社に訪れたといわれている。この神社は、占いや研究などに使用したとされる霊石「晴明の祈念石」を御神体として安置し、この霊石のおかげで南北朝時代の金ヶ崎の戦いや天正時代の織田信長と朝倉義景の間で行なわれた一乗谷城の戦いの兵乱の際にも戦火を免れたと言い伝えがある。このことから「防火の神」としても信仰されている。
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あの味の誕生秘話。
スカロップ
大きなトンカツに、甘めのソースをたっぷりかけた、敦賀市内の『ヨーロッパ軒』だけで食べられるご当地洋食メニュー。1210円(税込)
“味のお城”から敦賀の洋食文化を支え続ける。
福井県民のソウルフードであるソースカツ丼。またその代名詞となりつつある『ヨーロッパ軒』。福井市片町にある総本店からのれん分けを認められた分店第1号が『敦賀ヨーロッパ軒本店』だ。「味のお城」と親しまれる、この店のルーツは、創業者赤坂耕二氏の「敦賀に洋食文化を」という信条だ。
昭和14年に相生町に店を構えたが時代は戦争真っ只中。贅沢ができない暮らしの中でも赤坂氏は店を切り盛りし、肉が手に入らなければ近くの市場で手に入る魚に代え、工夫を凝らしてお客のおなかを満たした。そしてあらゆるメニューを考案し続け、この店が発祥の「スカロップ」や「パリ丼」などオリジナリティあふれる洋食メニューを生み出し、信条を貫き続けた。
現代、赤坂氏の長年の努力が実を結び、敦賀をはじめ嶺南の人々からは“洋食といえばヨーロッパ軒”と認知されるほどに成長を遂げた。洋食店として敦賀になくてはならないこの店には、赤坂氏の思い描いた“敦賀の洋食文化”への想いが今も深く息づいている。
敦賀ヨーロッパ軒 本店
【住所】福井県敦賀市相生町2-7
【電話】0770-22-1468
【時間】11:00〜14:00、16:30〜20:00
【休日】月・火曜
【席数】106席
【駐車場】30台
【HP】なし
幸せのロールケーキ
当初は女性客が買いに来ることが多かったが、若者の間で噂が広まり、今では男性客もこのロールケーキを買いに来ることも増えたそう。1本2000円、ハーフサイズ1000円
幸せが宿る!?縁結びのロールケーキ。
博物館通りに面するこの店には、県内外からお客が買い求めるロールケーキがある。厚めのスポンジ生地にコクのあるバタークリームをはさんだ懐かしくも優しい味わいのこのケーキには不思議なパワーがあるのだという。
それは、「結婚式の引き出物にこのロールケーキを」という注文が始まりだった。「後日、“引き出物のロールケーキを食べたおかげで良いご縁があった”と女性から連絡があったんですよ」と、当時を振り返るのは店主の平山さん。不思議なことにその後も同じような報告が続いたという。その不思議な体験をしたお客のアドバイスもあり、「幸せのロールケーキ」と名付けると噂を聞きつけた人々訪れ、人気に火が着いた。
この人気に、「素人からケーキ作りを始めたお店だったので、驚きました」と、平山さん。その後も人気は絶えず、ここまで店を続けてられたのは、お客の意見に支えられてきたからだという。そんなたくさんの人たちに見守られてきた平山さんの作るケーキだからこそ幸せが宿り、良縁を運んでくるのかもしれない。
洋菓子工房 ひらやま
【住所】福井県敦賀市相生町13-6
【電話】0770-22-6006
【時間】10:00~19:00(売切次第終了)
【休日】不定休
【席数】7席
【駐車場】共用駐車場あり
【HP】なし
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