2020/08/08
変わる、ということは、新しいものがこの世に生み出される、と同じ意味があると思う。街の人が自ら選んで取り入れた新しいものは新しい価値観を携えて生活を鮮やかに彩ってくれる。
変化することは楽しいこと。
いつだって時代は変わり続け、その度に進化してきたのだから。
だけど、その中でも変わらないのは、福井を明るく生きていく、ということ。世の中の見方を「ずらす」だけで福井は楽しさを共有できる街になる。

2カ月以上、何も起こらずやってきた福井。外に出るタイミング、どう図ろうか迷っている人、世界は徐々に外に出て、新しい時代を模索しているのだ。

今回の騒動で福井において一番ニュースになり、一番影響を受けたであろう場所、片町。飲食は人と人が密に接触する機会だけに、自粛モードは相当のものがあった。といっても自粛モードは早々に収まるわけでもなく、いち早く安心を謳わなければ、これから訪れるインバウンド観光に対して“福井の夜の顔”でのおもてなしができなくなってしまう。
そこで、事業者たちが立ち上がり、組織を作って“片町モデル”ともいうべき自主的な取り組みを始めているのだ。店の人たちが集まって会合を開き、それぞれどんな取り組みをしていくのかをまとめ、それらを基に取り組み内容を決めた。そしてそれを実践している証として、店頭にシールを貼ることに。来店客はそのシールがあることで安心して訪れることができる、ということだ。
実際この自主的取り組みの内容は多岐に渡り、しかもそれらを実践するというのだから、大変な苦労がある。しかしこのムードが後押ししたのは、安心への強い覚悟と片町の連携。昨日まではライバル、今日からは仲間。全員が一丸となって“福井の夜の顔”を盛り上げ、福井を明るくしていく。それが来たる新幹線延伸後のおもてなしにつながるのだ。
あわら市観光協会会長
前田健二さん

福井県民を対象とした「ふくいdeお泊りキャンペーン」では、あわら温泉にも多くの旅行ニーズが集まり、自粛ムードから一転、新たな観光需要の創出や地域経済への波及効果に期待が高まっている。「福井に住んでいても知っているようで知らないことは意外と多い。今回のキャンペーンをきっかけにあわらを訪れてもらって、地元のいいお店などを発見してもらうことで、リピートのきっかけにつながるかもしれない」と、あわら市観光協会の前田健二会長。
「一泊二食で帰ってもらうだけでは意味がない」と、今回のキャンペーンに合わせて、地元の飲食店などでお買い物を楽しむ「ランチ・スイーツめぐりクーポン」を通常の半額で提供。「温泉旅館に滞在するだけでなく、地域を巡りながら、お金を使っていただく流れをつくることで観光地全体が潤うことが大切」(前田会長)と考える。
「この状況をきっかけに変わる、変えていかなければいけない。例えば、早朝やナイトタイムの時間帯の過ごし方があります。訪れてくれた人に楽しんでもらうコンテンツづくりも今、取り組んでおかなければいけない課題のひとつ。また日本の感染予防対策などが世界でも注目を集めました。将来的には、あわらを拠点に金沢や京都を旅行する訪日外国人を誘客できるような戦略も選択肢の一つだと思います」(前田会長)。
福井鉄道株式会社 渉外事業部部長
辻美恵子さん

福井市と越前市を結ぶ『福井鉄道』、通称“ふくてつ”。9年間で乗車人数を40万人も増やし、年間200万人の利用客数を達成するなど、私鉄業界の中ではかなり成功の部類に入っていたが、緊急事態宣言が発出されたことにより、大幅な減少に転じた。自粛が明けた後も3密を避ける気持ちもあり、利用者は車に切り替えるなどの動きもあった。そこで3密を避けるために、定期的に車内消毒した電車を減便・運休せず運行するとともに、朝の7~8時台の電車については、分散乗車を呼びかけるなど、極力車内に余裕ができるように運行をしているそうだ。
そこで、「福鉄応援企画」として、これまでに制作したふくてつグッズの販売をサイト上で開始したところ、数多くの県内外の人からの注文があったとか。「応援グッズセットの購入を通してご支援をいただいており、また、注文に際しては「コロナの影響により大変でしょうが、負けずに頑張ってください。応援しています。」といったメッセージを多くいただき、当社の励みになっております(福井鉄道)」。
さらにもう一つ販売しているのが「応援切符」だ。こちらは1日フリー乗車券だが、有効期間が2年間という超ロングスパンの有効切符。一人で何枚も購入する人もおり、支援の輪が広がっているようだ。
鉄道はそれだけで県外から誘客できる存在。その存続のためにも県民の毎日の利用が欠かせないのだ。
オトナの知的好奇心を満たしてくれる美術館や博物館。現在では行政や関係各機関が提唱する予防対策に準じた感染症予防を行ない、ほとんどが再開している。イベント系の催しは当日受付、無制限で行なっていたが事前申込制、定員制、時間制限を設けるなど、各館それぞれが万全を期して開館している。
そんな中、世の中のデジタル化がますます進むだろうという意見もあり、来館せずとも館の魅力を発信する努力を行なっているところも。実際に学芸員が動画や画像などを撮影し、SNSで配信するほか、各地の博物館や美術館が連携する形の情報発信を模索。また、「終息後多くの人に来館してもらうための企画の実施や案内のレベルアップ、ミュージアムグッズの充実など、博物館として魅力を高めることへの努力を今から行なっていきます」と話すは『福井県年稿博物館』の伊戸さん。教育・観光拠点として、周辺の施設と連携した地域の賑わいづくりも実施していきたいという。
今回の状況の下でSNS発信を行なった結果、今まで興味がなかった人や時間が合わなくて訪れることができなかった人、建物自体の存在を知らなかった人たちが目にする機会が増えたことは良かったのかもしれない。一方で、この状況下にあっても美術館や博物館の空間を求めて来館する人もいたそうで、やはり文化芸術は必要なもので実際に足を運んで体感することこそ醍醐味なのだと再認識した人もいるのでは。こんな時だからこそ心を豊かに、非日常を感じられる美術館や博物館の重要性をじっくり体験してみるのも良いかもしれない。

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