2020/01/14
魚見の朝、モヤのかかる山間。 / 天気のいい昼間、のんびりと暮らす。 / 寒い夜にほっこり暖を 火のある暮らし。
町の9割が森林を占める池田町は、コンビニなど便利なものはあまりないが、地元のお母さんたちは「こっぽい日だね〜」とつぶやく。“こっぽい”とは、「幸せ」や「ありがたい」ということを表す池田町独特の方言のこと。池田町の中でも最も奥地に位置する魚見地区でその言葉の意味を紐解く。
池田町の奥地に広がる棚田で越前和紙の原料のひとつである“楮(こうぞ)”の収穫を行なうのは加藤志津子さん。
かつては県内でも盛んに栽培されていた楮は海外産が多く流通し、国内での生産は激減しているという。「越前和紙の原料を復活させたい」という思いが芽生えたのは定年後のこと。魚見地区の住民である長谷川浩さんの提案で魚見地区に広がる休耕田を利用して楮の作付けを行なうことを決意。「SAVE the KOUZO project」と銘打ち、楮の栽培をスタートさせ、4年目を迎える。
「プロジェクトメンバーや越前和紙の関係者、魚見の方々の協力がなければ実現できませんでした。この地区では認知していただいてきているので、今後はもっと池田町全体の人たちに知ってもらえたら」と、加藤さん。
楮の収穫量は毎年増加しているものの、普及させるにはまだまだこれから。楮再興に向けたチャレンジのさらなる飛躍に期待が高まる。
「SAVE the KOUZO project」代表
加藤志津子さん
越前市在住の和紙造形作家。午前中は魚見地区の楮畑で作業を行なう。「楮畑に来ると魚見の方が車のクラクションを鳴らして挨拶してくれます」
かつて魚見地区では、こんにゃく作りが各家庭で行なわれ、代々受け継がれてきたという伝統がある。「こんにゃくは肥料でなく地力でとれ」という言葉があるように、栽培には科学肥料をほとんど必要としない。このことから池田町の中でも特に雪深く、土の栄養がたっぷりあるエリアだからこそ栽培が盛んに行なわれていたといわれている。また、囲炉裏の「あま」と呼ばれる天井部分でこんにゃく芋を燻して保存していたこともあり、池田町の囲炉裏文化とこんにゃくには深いつながりがある。
この伝統的な食文化を絶やさないようにと、生芋こんにゃくの製造や手作り体験を行なっているのが、『魚見手作りこんにゃく道場』。ここでは、「三年玉」と呼ばれる大ぶりのこんにゃく芋を茹でて潰したものを手作業で一時間かけて捏ね上げる。「食感を左右する大事な作業だから腰から力を込めて捏ね上げるんですよ」と、代表の内藤政美さん。
また、こんにゃく作りを体験しに来たお客も同様に時間をかけて捏ねる作業を行ない、それを茹で上げて食べてもらうという。「今の時代、スーパーでお金を出せば簡単にこんにゃくは買えるけれど、これだけ大変なことをしてやっと口に入るんだという“食のありがたさ”や手間暇をかけた分の美味しさを感じてもらえれば」。
そんな魚見地区のこんにゃくは、生芋から仕上げるからこその風味が残り、コリコリした食感で出来立てホヤホヤを買い求めるお客もいる人気商品だ。
『魚見手作りこんにゃく道場』代表
内藤政美さん
池田町魚見出身。30年ほど前に手作りこんにゃくの製造を地元のグループに習いに行ったことがきっかけで『魚見手作りこんにゃく道場』の代表に
魚見手作りこんにゃく道場
【住所】福井県今立郡池田町魚見13-6-1
【電話】0778-44-6756 090-5689-7112
【営業時間】10:00〜12:00
【定休日】不定休
【駐車場】15台
【料金】大人1500円、小学生以下1000円(ともにお土産付き、一週間前までに要予約)
※対象年齢は4歳〜、体験は4名から実施
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