日々URALA(ウララ)

月刊ウララ1月号エリア特集『池田町・魚見』で感じる“こっぽい”時間

魚見の朝、モヤのかかる山間。 / 天気のいい昼間、のんびりと暮らす。 / 寒い夜にほっこり暖を 火のある暮らし。

池田町

町の9割が森林を占める池田町は、コンビニなど便利なものはあまりないが、地元のお母さんたちは「こっぽい日だね〜」とつぶやく。“こっぽい”とは、「幸せ」や「ありがたい」ということを表す池田町独特の方言のこと。池田町の中でも最も奥地に位置する魚見地区でその言葉の意味を紐解く。


魚見の朝、モヤのかかる山間。


越前和紙の原料再興へ
魚見エリアでのチャレンジ。

 池田町の奥地に広がる棚田で越前和紙の原料のひとつである“楮(こうぞ)”の収穫を行なうのは加藤志津子さん。
 かつては県内でも盛んに栽培されていた楮は海外産が多く流通し、国内での生産は激減しているという。「越前和紙の原料を復活させたい」という思いが芽生えたのは定年後のこと。魚見地区の住民である長谷川浩さんの提案で魚見地区に広がる休耕田を利用して楮の作付けを行なうことを決意。「SAVE the KOUZO project」と銘打ち、楮の栽培をスタートさせ、4年目を迎える。

楮を窯で蒸して軸と黒皮を剥がしやすくする。黒皮を乾燥させ外皮と甘皮を剥がし白皮にして出荷する

「プロジェクトメンバーや越前和紙の関係者、魚見の方々の協力がなければ実現できませんでした。この地区では認知していただいてきているので、今後はもっと池田町全体の人たちに知ってもらえたら」と、加藤さん。
 楮の収穫量は毎年増加しているものの、普及させるにはまだまだこれから。楮再興に向けたチャレンジのさらなる飛躍に期待が高まる。

「SAVE the KOUZO project」代表
加藤志津子さん

越前市在住の和紙造形作家。午前中は魚見地区の楮畑で作業を行なう。「楮畑に来ると魚見の方が車のクラクションを鳴らして挨拶してくれます」




伝統的なこんにゃくで
食のありがたさを。

 かつて魚見地区では、こんにゃく作りが各家庭で行なわれ、代々受け継がれてきたという伝統がある。「こんにゃくは肥料でなく地力でとれ」という言葉があるように、栽培には科学肥料をほとんど必要としない。このことから池田町の中でも特に雪深く、土の栄養がたっぷりあるエリアだからこそ栽培が盛んに行なわれていたといわれている。また、囲炉裏の「あま」と呼ばれる天井部分でこんにゃく芋を燻して保存していたこともあり、池田町の囲炉裏文化とこんにゃくには深いつながりがある。

地元のお母さんたちが週に3日、朝の7時半からこんにゃく作りを行ない、昼前には池田町稲荷にある『まちの駅 こってコテこていけだ』などに出荷する

 この伝統的な食文化を絶やさないようにと、生芋こんにゃくの製造や手作り体験を行なっているのが、『魚見手作りこんにゃく道場』。ここでは、「三年玉」と呼ばれる大ぶりのこんにゃく芋を茹でて潰したものを手作業で一時間かけて捏ね上げる。「食感を左右する大事な作業だから腰から力を込めて捏ね上げるんですよ」と、代表の内藤政美さん。
 また、こんにゃく作りを体験しに来たお客も同様に時間をかけて捏ねる作業を行ない、それを茹で上げて食べてもらうという。「今の時代、スーパーでお金を出せば簡単にこんにゃくは買えるけれど、これだけ大変なことをしてやっと口に入るんだという“食のありがたさ”や手間暇をかけた分の美味しさを感じてもらえれば」。
 そんな魚見地区のこんにゃくは、生芋から仕上げるからこその風味が残り、コリコリした食感で出来立てホヤホヤを買い求めるお客もいる人気商品だ。

『魚見手作りこんにゃく道場』代表
内藤政美さん

池田町魚見出身。30年ほど前に手作りこんにゃくの製造を地元のグループに習いに行ったことがきっかけで『魚見手作りこんにゃく道場』の代表に


魚見手作りこんにゃく道場
【住所】福井県今立郡池田町魚見13-6-1
【電話】0778-44-6756 090-5689-7112
【営業時間】10:00〜12:00
【定休日】不定休
【駐車場】15台
【料金】大人1500円、小学生以下1000円(ともにお土産付き、一週間前までに要予約)
※対象年齢は4歳〜、体験は4名から実施

魚見の朝、モヤのかかる山間。 / 天気のいい昼間、のんびりと暮らす。 / 寒い夜にほっこり暖を 火のある暮らし。




月刊ウララ1月号(582円+税)の巻頭は『ふくいの発酵食』。また今、気になる場所・ヒト・コトをご紹介する『What’s Hot』もお見逃しなく。書店、コンビニ、通信販売で好評発売中です。ぜひご覧ください。




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天気のいい昼間、
のんびりと暮らす。

大病からの回復、
体が芽吹く山の暮らし。

「池田町の人でも羨むくらい素敵な田舎暮らしをする夫婦がいる」と聞き、尋ねたのは内藤緑さん、博子さん夫婦。魚見地区でかつて盛んに行なわれていた炭焼きを唯一続け、農業や狩猟、森林の間伐・除伐、漢方づくりなど、山のことならなんでもこなす二人。石垣の上に佇む家から四季折々の風景を愛で、囲炉裏を囲んでゆったりと過ごしている。
 地元の人も知恵を借りにくるほどの“山の達人”である緑さんがこの場所で暮らすようになったのは、サラリーマン時代に大病を患ったことがきっかけだったという。体のことを考え大病後は早期退職をし、長年の夢だった自身の出身地である魚見地区に別邸を構え、山での暮らしが始まった。
 ここに来て一番大きく変わったのは食事だという二人。「食べるものには一番気を付けています」と、博子さん。無農薬野菜を自家栽培することで育てる楽しみが増え、採れたてを食すことで緑さんの病後の回復も順調に。そんな暮らしを続けていく中で「ある日、雑木林で落ち葉を敷いて寝転んでいた時に体が芽吹いていくのを感じたねぇ」と、不思議な体験をした緑さん。自然と密接に暮らすことが、人間本来の生命力を生み出すのかもしれない。

家の土台に敷かれた石垣は、緑さんが友人と一緒に建設したもの

賑やかな山奥の記憶、
魚見地区の今昔物語。

 自然に身を置き、のびのびと暮らす緑さんだが、今と昔を比べると山が変わってしまったと感じるという。「昔はこんな山奥でも寂しいってことはなかったなぁ。魚見の山々から炭焼きの煙がモクモクとあがっていてね。昔は山に働く人や暮らす人がたくさんいたんだよ」と、幼い頃の思い出を語る。
 また、この地域では炭焼きだけではなく、鉱山の採掘も盛んに行なわれ、採掘場に働きに来る労働者も多かったのだという。「小学生のころは“お道場”と呼ばれる今でいう公民館みたいな場所があって、いつも金石調査をする人たちが寝泊まりをしていたもんだ。そこにはいつも子どもたちが集まって賑やかだったねぇ。冬は竹で作ったスキー板で遊んだりしていたね」と、顔をほころばせながら話す。

炭工房 輝
内藤緑さん、博子さん

緑さんは池田町魚見金山地区出身の山のスペシャリスト。鯖江市に本宅を持つが、週の大半を魚見地区にある別邸で生活する

魚見の朝、モヤのかかる山間。 / 天気のいい昼間、のんびりと暮らす。 / 寒い夜にほっこり暖を 火のある暮らし。




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寒い夜にほっこり暖を
火のある暮らし。

北永さんの家では、「炭工房 輝」の内藤緑さんが作った炭を使用する。燃焼時間が長く、夜はパチパチと炭に火が着く音を聞きながらぼんやり火を眺めて過ごすことも

移住の決め手は
火のエキスパートがいる環境。

 北永敬一さん、なぎささん夫婦がそれぞれに東京から福井県に移住してきたのは約20年前のこと。越前町で出会い、結ばれた二人は、「自分たちの家に陶芸窯を作りたい」と、移住先を探し続け、魚見地区に辿りついた。
「窯は夜通し火を使うので中々理解を得られず、移住先が決まりませんでした」と、話すのは敬一さん。それが魚見地区に来て拍子抜けしたという。昔から炭焼きを生業にしていた歴史があり、囲炉裏文化が深く根付くこの地域で火は身近なもの。「私たちよりも火の知識も多く、驚きました」と、敬一さん。自然環境が厳しい面もあるが、地元住民の理解や窯の燃料である木も豊富にそろう好条件から移住を決めた。
 移住後は、地区の人々から学ぶことも多いと語るのは、なぎささん。「例えば、“オクラは池田大祭の時期までに種をまくんだよ”って教えてもらうとか。みなさんいろんな“暮らしの目安”をもっているんですよ」。周囲の人々に助けられることも多い一方で地元住民の手伝いをすることもあり、忙しく暮らす二人。しかし都会の忙しさとはまた違う“充実した忙しさ”を過ごし、田舎での生活を満喫している。

囲炉裏を囲んで語る
魚見地区の未来。

 魚見地区出身の長谷川さんと北永さん夫婦は、月に一度は囲炉裏を囲みながら料理を持ち寄ってお酒を楽しむ。その中でいつも話すことは、“魚見地区の未来”についてだ。

長谷川さん「若い頃から、いつか田舎の時代が来るだろうと考え、囲炉裏のある暮らしや伝統、それらの素晴らしさを伝えるために魚見の空き家の紹介や囲炉裏を囲んで音楽を楽しむ『炉端コンサート』の企画を続けてきました」。
なぎささん「移住前に『炉端コンサート』に参加したことも魚見に暮らすきっかけになりましたね」。
長谷川さん「都会で同じことをやろうとしても、火や煙を出すと近所迷惑になってしまいますよね。でもここでは火を焚き、煙を出すことが、“にぎやかでいい”と歓迎されるんですよ。これが魚見の魅力。魚見を知って移住してきてくれる人が増えて、やっぱり“田舎の時代”が来るなと自信になりました。実際に移住してみてどうでした?」
敬一さん「ここでは生活の中でおのずと居場所が見つかるのがいいですね。都会にいると居場所を見つけられない人が多いから。そういう人が魚見に来てほしい」。
長谷川さん「昔は自分の居場所を探すために都会に出る人が多かったけど、今は昔と逆かもしれないですね」。

 火を囲みながらそれぞれに思い描く“未来”について話は尽きない。魚見地区では移住者も増え、町内でも人気の移住地になりつつある。長谷川さんの言うとおり、この土地に賑わいが生まれはじめ、“田舎の時代”が訪れているのかもしれない。


一音窯
北永敬一さん・なぎささん

東京から越前町に移住し、陶芸を通じて出会った二人。その後結婚し、池田町に移住。地区での集会や日常生活で地域の人々から昔話を聞くのが楽しみのひとつ

『木もくレンジャーズ』代表
長谷川浩さん

全国の林業を盛り上げたいと、林業の傍らチェンソーアートティストとしても活躍する。長谷川さんの作品は町内の至るところに展示されている

魚見の朝、モヤのかかる山間。 / 天気のいい昼間、のんびりと暮らす。 / 寒い夜にほっこり暖を 火のある暮らし。




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