2020/09/05
全国各地で名だたる武将たちが天下取りの機会をうかがった戦国時代。ここ越前・若狭でも歴史の転換点となる出来事が起こっていた。京に負けず劣らずの栄華を誇っていた一乗谷と戦国大名、朝倉義景。大河ドラマ「麒麟がくる」の中にも登場するその姿から想像力を働かせてみる。
「麒麟がくる」は主人公・明智光秀をはじめ、理想や信念、自分を貫いた人たちの群像劇。確かな軌跡を感じ取ってみようと、あらためてゆかりの地を訪れてみる。
一乗谷の地に居を構え、5代約100年にわたり越前を支配した朝倉氏。NHK大河ドラマ「麒麟がくる」に登場する第5代当主・義景の館跡をはじめ、庭園跡や復原町並などに足を運びながら、戦国時代に思いを馳せる。
NHK大河ドラマ「麒麟がくる」に登場する第5代当主・朝倉義景の館跡や館跡庭園などが山の麓に広がり、往時の朝倉文化を偲ばせる。国の特別史跡と特別名勝に指定されている。
朝倉館跡を見下ろす高台に位置する庭園。様式などが他の庭園とは異なり、一乗谷で最も古い庭園とされている。戦国大名らしい、荒々しく、力強い表情の石が配置されている
福井県立一乗谷朝倉氏遺跡資料館
石川美咲さん
いしかわみさき/1991年、群馬県生まれ。2016年から同資料館に学芸員として勤務。専門分野は戦国大名権力論。美濃土岐氏・斎藤氏、越前朝倉氏の研究業績がある。一乗谷のお気に入りスポットは紅葉の時期の「諏訪館跡庭園」。趣味は山城めぐり。
『NHK大河ドラマ歴史ハンドブック 麒麟がくる』(NHK出版)にも寄稿する学芸員の石川美咲さん。「『麒麟がくる』で義景と光秀が初めて対面するシーンでは、光秀は“会所”と呼ばれる、今でいうVIPルームに招かれています。しかし、その次に対面する場面では敷居を跨げないような位置に下がり、さらにその後のシーンでは会所にすら入れてもらえなくなるなど、義景が光秀を遠ざけていく変化がドラマの中でもさり気なく描かれています」と、細かな演出にも注目している。
気になるのは、謎が多い前半生の光秀と越前の関係性。石川さんは「近年、熊本県で発見された『針薬方』という医学書から“明智十兵衛(光秀)”が“セイソ散”という傷付薬の製法等を伝えたこと、さらにはセイソ散が“越州朝倉家之薬”と記されていることから、つまり朝倉家伝来の薬である、と明らかになりました。これは光秀と朝倉家との直接的な接点を裏付ける貴重な史料と言えます」
「江戸時代に庶民の間で流行した『小夜嵐』という物語の中にも、“朝倉宗清という人物が生蘇散を処方した”という記述が出てきます。江戸時代の人々の認識の中でも一乗谷の医学の先進性が評価されていたのかもしれないですね」
光秀にまつわる記録からは、彼の人となりも見えてくる。前述の「光秀が口伝した内容をまとめたとされる『針薬方』には、“ヤマモモは四季によって量を加減すること”など細かい指示があります。実は信長からも“あなたからの手紙は見事で、その場の状況を見ているかのようだ”と言われるほど詳細な説明ができる人物だったようで、几帳面さが伝わってきます」
「そんな真面目で細かい、福井弁で言う“ぎっと”な人物だったからこそ、主君のことも許せなくなると収拾がつかなくなり、それが本能寺の変につながる苛烈な一面だったのかもしれませんね」と、石川さんは推察する。
【住所】福井県福井市安波賀町4-10
【電話】0776-41-2301
【時間】9:00~17:00(入館は16:30まで)
【休日】不定休
【駐車場】あり
【観覧料】一般100円、高校生以下、70歳以上無料
【HP】あり
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